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天居の鳥 ――あまゐのとり――

*登場人物

 

【いずく】

・主人公。

・20歳くらいの男性。

・優しくのんきに見えて覚悟の決まった人。

・あとりとは兄妹的な感覚でいる。

・最後に人を信じられなくなる。

 

【たづ】

・第二の主人公。20歳くらいの男性。

・前半は記憶がなく、幼児退行中。上品なこどもの演技をやってください。

・後半は新世界の神状態。

 

【あとり】

・10歳くらいの女子。

・足が悪く、杖で歩く。

・いずくの許嫁だが、兄妹的な感覚でいる。

・生意気に見えて聡明でしっかりしたタイプ。

・ 平均寿命が40代だった時代なので成人年齢も低く、あと2、3年もすれば性的に大人扱いされてしまうため不安を抱いている。

・無理してテンション高めに明るく振る舞っているため、賢いにも関わらずあまり知的な感じではない。

・当作で一番まともで一番救われないキャラクター。恐怖でパニックになるシーンと死ぬシーン有。

 

【帝/山部やまべ】

・50代近い男性。諡おくりなは桓武天皇。

・重々しく威厳のある口調、説明が細々した台詞は心持ちゆっくり目に。

・ぽっちゃりめ。

・史実だと女好きで、縁起の悪いこと続きのため長岡京を捨てて平安京へ遷都

・死なないが恐怖・苦悶のシーンがある。

 

【壬生佐長みぶのすけなが】

・30代の男性。真面目。

・兵衛府の役人で近衛の者。

・ちょっとゲスなところがある。

・時代劇風の重め口調。説明が細々した台詞はゆっくり目に。

・死ぬが死ぬシーンはないので気楽

 

【速見友名はやみのともな】

・第三の主人公。20代後半の男性。

・真面目。壬生の部下。

・誠実さをたづに買われ、死を免じられる。

 

【葛部実視かちべのさねみ】

・年齢不問、男性。

・速見の下にいる部下。いい人。

・いずくに接触したおかげで死なない。

 

【かの】

・22歳くらいの女性。やさしくて面倒見がいい。

・いずくとあとりを気の毒に思っている。

・たまにいる、善人で善行しかしないのに周囲を不幸にしていくタイプ。善人過ぎてドン引きしたくなる人に出会ったことないですか? そのタイプ。

・ちょっと夢見がちで鈍いため、いずくの考えていることには無頓着

・天然なので儚さや悲壮感はあまりないがあってもいい。

・可哀想な仲間はずれのいずくとあとりには私が親切にしてあげないと、と憐れんでいる

・「優しい善人の自分」が好きで、優しくする対象が好きかどうかというと、うーん??となる

・自分の善を疑っていない

・たづにものすごく嫌われるがギリ死なない。

 

【しののめ】

・采女。若い女性。

・キャバクラ等のエロいねえちゃん風。

・一人でも天皇の子を産めば一族安泰のような、ある意味命運を背負っている感覚があって(責めることのできないまじめな)計算高さはあったのではないか。

・恋愛感情は、まあ、お商売の女性が太客に抱く感情程度。媚びるし、ほかの女に取られたら怒るけど、ずーっといられると疲れる。

・地方豪族の娘でもとは純朴に田舎を走り回っていた

・台詞少なめ。

・死ぬが死ぬシーンはないので安全。


 

【郷人①~④】

・最終局面の状況解説役。

・台詞の言い回しは大意と次の台詞への繋がりが変わらなければ変更可。ただし、~じゃんなど現代的すぎる言い替えは不可。

・アニボ・イケボ禁止。

・台詞内容は郷人にとっては普通のことなので悪役風に喋るのは控え、普通のことを話しているような口調で。

・さとびとはごく普通のさとびと、そのあたりにいる普通の人。

・村全体が貧困層で、農地に不向きの谷あいに農地を作っており災害にも見舞われるため裕福ではない。

・郷の規模は200人程度、近親婚が多く先天的な障害のあるものも多い

・よそ者嫌いで時と場合によっては殺害も辞さない

・ただし、旅の僧侶には親切

・さとびと同士の関係性は「近所の人」そこそこの血縁があるかもしれない。

・協力関係がしっかりしていないと生きていけない土地柄なので仲が良く、村祭りなんかでは酒を飲んだり猥談で盛り上がったりする感じ

・年齢はお任せしますが、あまり少年らしくない台詞内容なので30歳以上くらい。

・貧しい暮らしの中で人柱を飼っているのでほんのり蔑んでいるし、本当にその辺の鶏が〆られる程度の感慨しかもっていない。

・恐怖シーンがあるので実は演じるのが大変。

 

【兵①~③】

・性別はすべて男性、成人してさえいれば年齢不問。台詞極少。

・2秒ほどの断末魔の演技あり。死ぬ。実はすごく大変な役。

 

計 16名 うち男性12名 女性4名 



 

*演技・編集上の注意

 

・長いので、分割方法は演じる方々にお任せいたします。

・史実に照らし合わせ、作品は晩秋~冬至あたり。なので虫の音などは使わないこと。結部のみ、冬以外のどの季節でも可

・作品ジャンル:伝奇風ダークファンタジー。

・誰が誰に話しかけているのか、台詞に方向性がある編集をしていただければ幸いです。

・指定していない箇所のSE・BGMは任意で。

​*以下、本文

 

 SE:激しい沢の音。石をかき分ける音。浅瀬を歩く音。

 

いずく「(SEをしばらく流した後、ため息をついて)あー、いい石はないなあ……(やれやれといった様子で)山肌がだいぶ洗われたっていうのに、瑪瑙めのうどころか、玻璃はりの一つも見つからない……郷さとの人たちより先に石拾いに来たのに」

 

 SE:小雨、蓑・笠に雨が当たる音

 

いずく「(独白)また降ってきた。まだ山も緩ゆるんでるし、もう帰るか……お、あそこも大きく崩れてる。崖がけの上がえぐれてるな。上の道が通れるようになるまで相当かかりそうだ。郷の堤つつみも切れなきゃいいが……」

 

 SE:沢を歩く音

 

「(間をおいて)あれ? ……馬と……人だ!」

 

 SE:駆け寄り土砂を掘る音

 

いずく「これはだめだ。……ざっと見て、三人。僦馬しゅうばの連中か……崖の上から土と一緒に流されたんだろうな……気の毒に。(ため息をついて)弔とむらうのは雨が上がってからでいいか。しかしなんであんな道を? 獣と狩人かりゅうどくらいしか通らないのに」

 

 SE:ごつっと木の櫃ひつに当たる音

 

いずく「なんか当たった……箱? ……大きな木櫃きびつだ……」

 

 SE:しばらく掘る音

 

いずく「(独白)あいつら、これを運んでたんだな。変だな、あんなに大荒れだったのに。中身はなんだろう?」

 

 SE:掘り進み、木櫃から泥を払う音

 

いずく「なんだ、この櫃……丹にが塗り込まれて、変な縄なわでぐるぐる巻きだ……これは……髪の毛?! いやいやいや! 髪で縄作って櫃を縛るなんてあるか? きっと馬のしっぽかなんかだろう……(気味悪さを振り払うように)うん、きっと馬のしっぽ! それしかありえない! とりあえず、切ってみるか…………うう……切りにくいな(少々の間、切ろうと呻吟する)」

 

 SE:やっと切れる音、重い木の櫃を開ける音 

 

いずく「(拍子抜けしたように)あ……人? 宝物じゃないのか、しょうがないなあ……でもこいつ身なりがいいな。お、玉の簪かんざしだ。売ればちょっとは腹が膨ふくれるかもな。よし、持って帰ろう!(その辺の棒を拾ってそっとつついて)おーい! お前死んでんのかー? 雨がやんだら弔ってやるから、とりあえず着てるもんとか、その玉がじゃらじゃらした簪とか、もらってくよー」

 

たづ「う……う……」

 

                      

SE:雨が激しくなり、雷鳴も加わり場面転換

  貧しい小屋の中、いろりに火を焚く音、戸板に当たる雨風の音

 

あとり「兄ちゃん、遅いなあ……危ないから行くなって言ったのに……もう日が暮れるのに、ほんと、なにやってんだろ」

 

 SE:雨音の中、ぬかるみを歩いてくる音か近づく。戸板を軽く蹴る音

 

いずく「(戸板の外から)あとり! 開けてくれ! 早く」

 

あとり「(怒鳴って)自分で開ければいいでしょ」

 

いずく「手が離せないんだ」

 

あとり「もう!」

 

 SE:藁の上を歩く音、戸板をどける音。

   (※貧乏なのでスライド式でなくただ置いただけの戸板)

   藁敷の床に倒れ込む音

 

いずく「ああーーー!! 重かったーーーー!!」

 

 SE:戸板を元通りに立てかける音

 

あとり「誰この人」

 

いずく「知らん。沢の上の崖が崩れてて、その崩れた土が沢にダーッとこうなってて、人も馬も埋まって死んでて、そいつらが運んでた櫃の中にこいつがいた。櫃ごと持って帰ろうとしたけど、重くて無理だったんで、とりあえずこいつだけ背負しょって帰ってきた」

 

あとり「背負しょって帰って来たって……この人生きてんの」

 

いずく「一応あったかいし、生きてると思う。(ため息)死んでたら、衣きぬと簪だけ持って帰ったんだけどなあ」

 

あとり「笠かさも蓑みのもこいつに着せてやったんだ、お人好しだね。干しとかなきゃ……(笠を外して、取り落とし)わっ!! なにこいつ!!!」

 

いずく「どうした?」

 

あとり「(怯えて)……兄ちゃん何でこんなの拾ってきたのさ」

 

いずく「え、なんで」

 

あとり「髪が真っ白! ほら!」

 

いずく「郷長さとおささまのおばばもこんな色だろ」

 

あとり「こいつはどう見ても年寄りじゃない。兄ちゃんくらいの歳でしょ。絶対、もとから真っ白な髪なんだよ! 冬、沼に来てるでっかい鳥みたいに!」

 

いずく「言われてみりゃ、鶴みたいな白だ」

 

あとり「こいつが鬼だったらどうすんの?!」

 

いずく「鬼?」

 

あとり「こないだ旅の坊さんが言ってたの忘れたの? 仏様を信じないとか、お坊さんにお金や食べ物を出さないやつは、鬼にひどい目に遭わされるって!」

 

いずく「(笑って)うちはあのお坊さんに何もあげられなかったもんなあ」

 

あとり「もし鬼だったら……このまま助けないほうがいいんじゃ……兄ちゃん、捨ててきてよ」

 

いずく「嫌だよ。ここまで運んで来て疲れてんだからさ」

 

あとり「あたしたち、食い殺されちゃったらどうすんの!? あたし足曲がりだから、逃げられないよ」

 

いずく「大丈夫。こいつはそんなことはしない」

 

あとり「なんでそう言えるの」

 

いずく「なんとなくそんな気がするから。……とにかく、先に体洗わせてくれ。泥まみれでこれじゃ俺のほうが鬼みたいだ」

 

 SE:桶に水を汲んで、ばしゃばしゃしたりぼろ布を水に浸して搾ったりする音

 

いずく「だいぶさっぱりした。さて、こいつも脱がして拭いてやるか」

 

あとり「その前に肌ばかまは穿はいてよね」

 

 SE:布を投げつける音

 

いずく「(受け止めて)おっと」

 

あとり「ほら、兄ちゃんが拾ってきたんだから、兄ちゃんが世話して」

 

いずく「はいはい」

 

 SE:水を捨てに戸板を外して外に出る音、また入ってきて水の入った桶を置く音。ぼろ布を水に浸して搾ったりする音を台詞と重ねて

 

いずく「(拭いてやりながら)ケガや瘡もがさはない。熱もないし、息も脈も乱れてない。寝てるだけって感じだな。髪はほどくとかなり長い。肌は胡粉ごふんで塗ったみたいにシミや傷跡ひとつない。人であれば郡司ぐんじさまや国司こくしさまだってほくろや傷の一つくらいあるだろうに」

 

あとり「だーかーらー、人じゃなくて、鬼なんじゃないの? 生っちろい、カエルの腹みたいな肌の色して」

 

 SE:ぺちぺち音

 

いずく「(ぺちぺちと頬を痛くないよう叩いて)でもこいつはカエルみたいにねばねばしてない」

 

あとり「(被せて)ぺちぺちしないで。鬼が目ぇ覚ましたらどうすんの」

 

いずく「あとり、ほら、頭を見てみろ。どこにも角はないよ。鬼には角があるんだろ?」

 

あとり「鬼じゃなくても、なんかの化物かもよ」

 

いずく「ちょっと毛色の違う都の偉い人ってやつかもしれないぞ。都の偉い人は郷長さまや郡司さまよりもずっと豊かなんだそうだ。ちゃんと手当てして礼を弾んでもらおう」

 

あとり「(被せて)都の偉い人が櫃に入って沢に落ちてるわけないと思う。絶対おかしいって……あ痛っ! なんか踏んだ!」

 

 SE:不用意に藁を踏んでパキパキッと折れる音、持ち上げてじゃらっと玉のふれあう音

 

あとり「なにこれ。簪かんざし? 割れちゃった……」

 

いずく「ああ、踏んじゃったか……ケガしてないか?」

 

あとり「大丈夫だけど」

 

いずく「さっきこいつから外してそこに置いてたんだ。売ろうと思って」

 

あとり「これ、いいものなの?」

 

いずく「これ、たぶん黒い玻璃だ。すごく珍しい魔除まよけの玉なんだよ。陰陽師とかいう連中がこの辺にも探しに来たことがある。欠片でもいい、いくらでも出すから売ってくれって。(しみじみと壊れた簪を調べて)割れたのは管玉くだたま四つか……他の玉はきれいに残ってる。これだけでもきっと高く売れるよ。郷長さまを通して長岡の京みやこで売ってもらったら、しばらく米が食えるぞ」

 

あとり「どうせあたしたちの手元に来るお米はほんの少しだよ。今までだって、筵むしろ織っても石磨いても、あたしたちの懐ふところに入るまでにさんざん抜かれたもん」

 

いずく「田畑を持ってない俺たちがここで暮らせるのはみんなのおかげだから、仕方ないよ」

 

あとり「それはわかってるけど、悔しいじゃない」                 

                   

たづ「(かすかに呻いて)う……うう…」

 

いずく「あっ、目を覚ましそうだ。聞かれたかな」

 

あとり「(怯えて)兄ちゃん、離れようよ。襲ってきたらどうすんの」

 

いずく「大丈夫だって。おっ、目が動いた。おーい、大丈夫か。……あ、目ぇ開けた! おい、気がついたか? どっか痛いとこはないか?」

 

たづ「……」

 

いずく「えーと、俺の名はいずく。こっちは妹のあとり。お前、がけ崩れで沢に流されてきた櫃の中にいたんだよ。丹塗にぬりの……毛縄けづなでぐるぐる巻きにされたでかい櫃だ」

 

たづ「ひ……つ……?」

 

いずく「そう、櫃。まだ山肌やまはだが緩んでて危ないから連れてきた。お前、名は」

 

たづ「な……?」

 

いずく「ほら、なにワラのなんとかヒコとか、なにベのなんとかマロとか、あるだろ? お前、働いたことのない手してるし、いい暮らししてたんじゃないのか?」

 

たづ「……わからぬ」

 

いずく「え? わからぬって?」

 

たづ「……なにも……わからぬ……名も何も」

 

いずく「誰からも一度も名を呼ばれたことがないわけないだろ? 名を教えることが憚はばかられるなら、どこに住んでたかだけでもいいから……(たづが泣き出したのに驚いて)へっ?」


 

たづ「(ぐすぐす幼児のように泣き出す)なにも……なにも……ない。頭の中にも胸の中にも、なにもない(ずっと泣き続ける)」


 

いずく「……あとり、俺、なんかまずいこと言った?」

 

あとり「あたしに聞かないでよ」

 

いずく「うーん……こいつ、もしかすると、うつけか?」

 

あとり「うつけとはなんか感じが違うよ。ほら、かなとさんの刀自とじさん、知ってる? あの人若いとき頭を強く打って名前も子どものことも忘れてしまってたんだけど、半年くらいで思い出して前と変わらずに暮らせるようになったんだって。こいつも頭を打ったんじゃない?」

 

いずく「じゃあ、しばらく面倒見て、こいつが何もかも思い出したら、こいつの家からきっと舂米つきしねの十俵じっぴょうくらいはもらえるんじゃないか」

 

あとり「(被せて)鬼子おにごが厄介払いされたんじゃないの?」

 

いずく「(被せて)食い物の心配だったら、俺が頑張る。こいつにも手伝ってもらうさ。(たづに向かい)うわあ、洟はな垂らして……ほら、これで拭くんだ……ああ、下手だな。貸せ。いい大人が泣くんじゃない」

 

たづ「(めそめそと)……帰る」

 

いずく「どこに帰るんだ」

 

たづ「帰る……帰る?(心底不思議そうに)どこへ?」

 

いずく「それを今訊いてるんだ。連れて行ってやるから教えてくれ」

 

たづ「(少し考えて、不安そうに)ここ?」

 

いずく「え?」

 

たづ「(心底不思議そうに)ここ?」

 

あとり「(少し考えてから)そうかあ、こいつ、何も覚えてないってことは、ここしか知らないってことなんだ」

 

いずく「だからここを家だと思ってるのか……。じゃあいいよ、家でもなんとでも、好きに思ったらいい」

 

たづ「ここが……家」

 

いずく「そうだよ。お前の今だけの家だ」

 

あとり「ねえ、兄ちゃん、こいつになんか着せなよ。目障りだよ」

 

いずく「衣きぬはまだ洗ってないし、はだばかまも今俺が穿はいたやつしかなかったし……あとりの蓑みのでも着せとくか」

 

 SE:がさがさと蓑を着せる音

 

いずく「チクチクするだろうけどこらえてくれ。着せるものがないんだ。俺だってはだばかまいっちょでいるくらいなんだから」

 

あとり「兄ちゃん、こいつに名前つけない? しばらくうちにいるんだったら、こいつとかそいつとか呼ぶのは変だもん」

 

いずく「よし、そうしようか。おい、お前が名前を思い出すまで、仮の名前を使おうと思うんだ。自分でつけるか?」

 

たづ「うぅ?」

 

いずく「俺たちがつけてもいいか?」

 

たづ「うぅ?」

 

いずく「……じゃあ、我が家はみんな鳥の名前だから、うーん……『たづ』はどうだ。いい名前だろ」

 

たづ「たづ……鳥?」

 

あとり「うん、たづはツルとも言うよ。寒くなるとこの辺の田んぼや沼に来るんだ」

 

いずく「ああ、大きくて白くて、子どもをとても大事にする鳥だ」

 

たづ「(覚えようと努力するように呟いて)たづ」

 

いずく「よろしく、たづ」

 

たづ「……父上?」

 

いずく「え?」

 

たづ「産なしし父母ちちははこそ、子に名を賜たまわるべけれ?」

 

いずく「(ちょっと引きつつ)え、たづ、難しい言葉知ってるんだね……もしかして何か思い出したんじゃ……」

 

たづ「(被せて)たづに名付け給たもうたからは、こなたさまはたづの父上。父上に名を給うたたづは、父上の子……」

 

いずく「いやいやいやいや、いきなりとんでもないこじつけだな!? 俺がたづの父ちゃんって、ありえないから。たづは俺と同じくらいの歳だろ?」

 

たづ「(半泣きで)たづはまだおさない……ちいさい……」

 

いずく「えええ? 自分の手とか脚とか見てみろ。大人の手足してるから」

 

たづ「たづは、ちいさい、……(自分の手をよくよく見て衝撃を受け、怯えて)……こんな……こんな手はたづの手ではない……こんな手……父上ぇ(泣く)」

 ※泣き方は女々しくならないように。良家の男の子のようなしくしく泣きで

 

あとり「こいつ、中身が子どもになってるみたい」

 

いずく「(弱って)あああ、もう泣くな、よしよし」

 

あとり「なんか変なことになってきてない?」

 

いずく「変だよなぁ……はいはい、たづ、おつむなでなでしてやろう……たづはよい子だ、もう泣くな」

 

たづ「(べそをかきつつ)うん」

 

あとり「ねえ、たづ、もし兄ちゃんがたづの父ちゃんだったとしたら、あたしはなに? 叔母ちゃん?」

 

たづ「(泣き終わった後のような感じで曖昧な声)??」

 

あとり「あたしは、あとりって呼んでよ」

 

たづ「あとり」

 

いずく「俺もいずくって呼んで欲しいなあ……」

 

たづ「父上は、父上」

 

いずく「……俺は父上って呼び続けられるってことか……いててて、膝に乗るな」

 

あとり「なつかれちゃったねぇ」

                                                 

 SE:戸板を軽くたたく音

 

かの「(戸板の外から)こんにちはー、かのだけど、いるー?」

 

あとり「あっ、かの姉ちゃんだ。(戸板のほうに向かって)はーい」

 

 SE:戸板を開ける音

 

たづ「(おどおどと)父上……たづはおそろしい」

 

いずく「え?」

 

たづ「知らぬ者がきた」

 

いずく「大丈夫、かのは俺の幼馴染おさななじみだよ。よく食い物を分けてくれるんだ」

 

かの「(被せて)こんにちは、あとりちゃん、いずく。やっと小雨になって来たわね。あら、どうしたの、そのかっこ」

 

いずく「ちょっと山に入ったら、泥だらけになってさ。洗い替えがないんだ」

 

かの「肌寒いのにどうしたのかと思ったわ。今日はキビを一升ほど持ってきたのよ」

 

いずく「ありがとう、いつもいつも」

 

あとり「あ、そうだ、兄ちゃん、かの姉ちゃんに少しシワガラあげてもいい?」

 

いずく「いいよ」

 

かの「いずくたちがくれるきのこはとっても美味しいわ。いつも楽しみにしてるの」

 

いずく「ん、またたくさんとってくるよ」

 

かの「ありがと。それで、あなたの背中にぴったり貼りついているのは、いったい誰?」

 

あとり「(いたずらっぽく)ああ、こいつはねえ、兄ちゃんの子」

 

かの「えっ」

 

いずく「あとり、余計なこと言うな。こいつは山で行き倒れてたんだ。うちで寝かしてたんだけど、目が覚めたら、何にも覚えてないって。そんで、自分のことはわらわで、俺のことを親だと思ってしまってる。とりあえずたづって呼んでるよ」

 

かの「あら、まるで鳥のヒナだわね。綺麗な髪ねえ。真っ白で雪みたい。肌もきれいだわ、天人ってこんな感じなんじゃないかしら? はじめまして、たづ。私はかのよ」

 

いずく「たづ、挨拶されたらこちらもご挨拶するんだぞ」

 

たづ「(不良が不愛想に会釈する感じで)……ん」

 

かの「こんな綺麗な子に蓑みのなんか着せて……」

 

いずく「今だけだよ。さっき山に行ったら、崖崩れで死人しびとが出てた。郷さとの者じゃなかったし皮の鎧よろいをつけてたから、たぶん僦馬しゅうばの連中だと思う。天気が良くなったら衣きぬを剥いでたづに着せるよ。今頃は山犬が食い荒らしてぼろぼろだろうけど、繕えば大丈夫だろう。俺もやっと洗い替えができる」

 

かの「気持ち悪くないの」

 

いずく「今まで無事だったんだからこれからも大丈夫。持ち主には塚を作って花でも供えるさ」

 

あとり「ちゃんとむくろじで洗うから大丈夫だよ! あたし、繕うの上手だし」

 

かの「(悲しそうに)そう。(気を取り直して)……父さんの目を盗んできたから、もう帰らなきゃ。いずく、小さい子には優しくしないとダメよ?」

 

いずく「わかってるよ」

 

あとり「(被せて)またね!」

 

かの「じゃあ、また」

 

いずく「(思いを込めるように)またな」

 

 SE:戸板を開け閉めする音

 場面転換、内裏

 SE:勺で掌をぱしぱし叩く音

 

帝「鳥深とみの山中さんちゅうとはのう……(ため息をついて)そのようなところにあったか。よう探したものよ」

 

壬生「百禽に数多あまたの国図郡図こくずぐんずを与えておそろしき気きに鳴き騒ぐ国、郡こおり、郷さとを定め、その地へ狗神いぬがみ憑きを引き回し、吠え狂う方かたを探したるものにございます。たしかに黒き岩あり、その下深く、毛縄けなわの封を施した丹塗にぬりの櫃ひつがございました」

 

帝「禽獣きんじゅうは幾十の陰陽師おんみょうじ、修験者しゅげんじゃに優れたるか……して、その櫃はいかがした。なにゆえ持って参らぬ」

 

壬生「掘り出して木馬きんまに載のせ、半里はんりほど進みましたるに、にわかに滝の如き雨にて土砂どしゃが崩れ、先導せんどうの我らが振り返りし時には、櫃は運びおる兵馬へいばと共に巻き込まれ流れていったのでございます。天気の晴るるを待ちて、崖下を探したところ、何者かに切られた髪の縄と櫃の木片は見つかるも、他には何も……おそらくは封が解けたかと……申し開きのしようもございませぬ」

 

帝「天気など構っておるからだ! 郊祀こうしの儀が迫っておる、直ちに探せ!」

 

速見「恐れながら申し上げます。命めいを賜るに、我ら櫃ひつの中にあるはいかなるものかを知らず、探しようがごさいませぬ。何が入っていたかをお聞かせ賜たまわりたく存じます」

 

帝「確かに。ではこれから伝える朕の言葉は誰にも漏らさぬように。よいか」

 

壬生・速見「はっ」

 

帝「すめら伝えに、天孫降臨てんそんこうりんの折、瓊瓊杵尊ににぎのみことと共に地に下りし者の中に白くまつろわぬものがあり、それが黒玻璃玉くろはりだまの簪かんざしと丹にの櫃に封じられおる、という」

 

壬生「白くまつろわぬものとは……」

 

帝「朕は口伝くでんより他のことは知らぬ。(ため息をついて)十年前、父の后きさきであった井上いのえとその子である他戸おさべが身罷みまかりしより天変地異てんぺんちい多くして、血のつながらぬとはいえど母と弟を害せるはこの朕であるという流言飛語りゅうげんひごに民が惑まどうておる。……こたびの藤原種継ふじわらのたねつぐのことも、わが弟、早良さわらの死も、すべて祟りであるなどと妄言もうげんも甚だしい。この気運きうんを改めるには、皆が瞠目どうもくするに足る、儀式の要かなめが必要なのだ。霜月、郊祀こうしの三日前までに必ず探して参れ」

※いのえ・さわらは「虫歯」「むすめ」などと同じく高め平板、おさべ・こうしは「福井」「香川」と同じく高→低。

 

壬生・速見「はっ」

 

 SE:壬生・早見が退出し、並足の馬に乗っている音。

 

速見「櫃の中に入っていたのは一体なんなのでしょうね」

 

壬生「わからん。もしそのまつろわぬものとやらが生きているならば、異形いぎょうであろうが……瓊瓊杵尊ににぎのみことでさえ死から免まぬがれなかったのだ、おそらく骨か何かだろう」

 

速見「私はやけに胸の内がぞわぞわとするのです」

 

壬生「もう舟からは降りられぬ。先の帝の后、井上いのえさまとそのお子の他戸おさべさまが、幽閉されていた舘やかたにて同日に身罷みまからられたのは、やはり民の言う通り、今の主上の御与おんあずかりりもあるだろう。そのようなお方から内々ないないに命めいを賜たまわったのだから、不首尾ふしゅびの折おりは我々だけでなく妻や子にも累るいが及ぶやも知れぬ」

 

速見「壬生さまは平気なのですか」

 

壬生「我々のような任に就く者は親、妻や子をどこぞに隠し、いかに親しい相手であろうとも、その場所を決して伝えぬ。拷問を食らえば、我が妻子のことなら命を賭して隠しおおせても、他人の妻女のことなどは易々やすやすと喋ってしまうものだからな。速見、備えは早いほうがよいぞ」

                                                 

 場面転換、いずくの貧相な小屋の中

 SE:何か木や竹や藁で作業している風な音

 

あとり「ねえ、兄ちゃん、これ見て。割れたのはよけて、簪の玉をつなぎ直したよ」

 

いずく「お、少し小さくなったけどきれいだな」

 

あとり「どこにどの玉を使うかとか、がんばって考えたんだ」

 

いずく「たづ、これはもともとお前が髪に挿さしてたやつだ。ちょっと踏んじまって玉がいくつか割れてしまった。ごめんな」

 

たづ「う?」

 

いずく「こうしてあとりが直してくれたから、たづ、つけてみるか」

 

たづ「(怯えて)……こわい」

 

いずく「怖い?」

 

たづ「たづはそれがおそろしい、それはとてもよくない。いらない」

 

いずく「いらないんだったら、売ってもいいか?」

 

たづ「たづの前からなくなれば何でもよい」

 

あとり「こんなにきれいなのに、たづは何で怖いんだろ? ほーら」

 

 SE:じゃらっと簪をかざして見せる音

 

たづ「(適当にちいさくビビりあがる声)!!!」

 

いずく「……いててて、しがみつくな! あとり、たづをいじめるのはやめろ」

 

あとり「たづってさあ、何かと兄ちゃんにくっついてるよねえ。兄ちゃんもどんどん慣れて父ちゃんぶってるし」

 

いずく「だってたづはわらわなんだろう?」

 

あとり「わらわかもしれないけど」

 

いずく「あとりもよくたづと遊んでくれて、いい姉ちゃんだ」

 

あとり「そりゃ……たづの居場所はここだけだし、わらわに意地悪したくないし」

 

いずく「あの簪、たづはいらないって言ってるんだし、売るまではお前がつけててもいいぞ」

 

あとり「え、いいの?」

 

いずく「うん。ただ、たづが怖がるから近くではつけないでくれ」

 

あとり「(嬉しそうに)ありがとう!」

 

いずく「(満足そうなため息をついて)……あとりも女なんだな」

 

あとり「え? 何?(素で)気持ち悪いんだけど」

 

いずく「いや、そういう身を飾るものをつけて、嬉しそうにするところはやっぱり女なんだなって思っただけだよ。娘が育つのを見てる親の気持ちみたいなもんだ。さあ、沢に石拾いに行こうか。あとりはどうする? かのも行くって言ってたぞ」

 

あとり「かの姉ちゃんにこれ見せたいな。行く!」

 

いずく「ほら、杖つえ。俺はたづと一緒に少し離れて行くよ。たづ、笠かさをかぶれ」

                                                 

 SE:戸板を閉める音 

 場面転換

 SE:沢のせせらぎ、風や鳥の声などの森の音

 

あとり「ほんっとうにいいお天気だね。小春日和だ」

 

たづ「たづはまぶしい」

 

あとり「外出るとき、ずっと笠かぶってるもんね。そこの木陰に入っときな」

 

たづ「ん」

 

あとり「兄ちゃんとかの姉ちゃん、ずーっと向こうに行っちゃったね。……何話してんだろ」

 

たづ「しらない」

 

あとり「ねえ、たづ、この簪つけたままだったら、どのくらいまでなら近寄ってもいいの?」

 

たづ「そのくらい」

 

あとり「ふーん、二間にけんぐらいって感じなんだ」

 

たづ「……うん」

 

あとり「(間をおいてから)ねえ、たづ、そこに座ったままでいいから、ちょっとだけ話を聞いてほしいんだ」

 

たづ「ん」

 

あとり「(間をおいて)あのね……兄ちゃんってね、かの姉ちゃんのこと好きなんだ。知ってた?」

 

たづ「……父上が?」

 

あとり「そう。兄ちゃんは黙ってるけどわかるよ。だけど、かの姉ちゃんは兄ちゃんのことはただの幼馴染としか思ってないし、別の男と好きあっててさ、輿入こしいれを楽しみにしてる。だから、二人っきりでいたって、男と女の、その……いちゃついたりはしないよ?」

 

たづ「(驚いて)!!」

 

あとり「あたしたちの郷さとってさ、どっか遠くから逃げ出した奴婢ぬひ? とかいう人たちが住み着いたのが始まりなんだって。隠田かくしだを作って暮らしてきたから今でもよそ者には冷たいし、郡司ぐんじさまは隠田を見逃す代わり、自分だけの米や布をせしめてる」

 

たづ「(不思議そうであいまいな相槌)???」

 

あとり「(笑って)たづにはわかんないよね。……ここは谷あいで米も粟あわもたくさんはとれないし、よく山崩れや大水おおみずで田畑も家もめちゃめちゃになるんだ。堤つつみを作ってもしばらくすると切れちゃう……たづは人柱って知ってる?」

 

たづ「ひとばしら??」

 

あとり「堤や橋やなんかを作るときに、生きている人を礎いしずえに埋めるの」

 

たづ「……埋める? 死ぬ?」

 

あとり「うん、死ぬよ。だけどその魂のおかげで、堤も橋も、強く立派に出来上がるんだって。うちの郷の堤にも人柱が埋まってるんだ。誰だと思う?」

 

たづ「???」

 

あとり「兄ちゃんの父ちゃん」

 

たづ「父上の、父上」

 

あとり「そう。この郷の人たちは、切れる堤を直すたびに人柱を出すのが嫌になって、よそ者を飼うことにしたんだ。その血筋が兄ちゃんなの。だから兄ちゃんは、かの姉ちゃんが好きでも何も言えないんだ」

 

たづ「……なぜ逃げない?」

 

あとり「あたしたちが逃げたら、次の人柱は一番親しかった人が選ばれるから、かの姉ちゃんになっちゃう。だから兄ちゃんは絶対逃げないよ。(ため息をつきながら)あたしはこんな足曲がりに生まれたから、人柱を絶やさないよう子を産めって、あの小屋に捨てられたんだって。まだこわらわだった兄ちゃんが、重湯おもゆ飲ませておむつ換えて育ててくれたの。あたしたち、お互いにめおとになるなんて全然考えてないのに、あたしは、兄ちゃんの子を生むことになってる。兄ちゃんの次はあたしが人柱、その次はあたしと兄ちゃんの子。……いやだなあ……神さまがやってきて、あたしたちを助けてくれないかなあ」

 

たづ「(被せて)かのはいらない……父上とたづとあとり、逃げよう」

 

あとり「だめだよ。かの姉ちゃんが死んでもいいの?」

 

たづ「死んでいい。たづはかのが嫌い」

 

あとり「そんなこと言っちゃだめ……あ、たづ、どこ行くの」

 

たづ「(遠のいた声で)父上に逃げようと言う。急ぐ」

 

あとり「ええ?! 待って! たづ! たづ!! 兄ちゃんに言っちゃダメ!! 待ってってば! もう!! 杖、杖どこ……たづ、待って!」

                            

 ⑧青緑                        

SE:立ちあがってたづを追おうとする足音、甲冑の音、がさがさと藪をかき分け四、五人が殺到する音。少し遅れて騎馬の音

 

あとり「あ、あんたたち、誰? え?(次の打撃音にあわせ静かめの悲鳴)……ぎゃっ」

 

SE:打撃音

 

あとり「(小さく口からぷつぷつと空気が漏れるように)う……う……」

 

葛部「壬生さま、この者、黒玉くろだまの髪飾りを着けております」

 

壬生「うむ、仇光あだびかりしてよき目印であった。ではこの娘を連れ、長岡の京みやこへ戻ろう」

 

速見「壬生さま、このわらわはこの辺りの乞食かたいでは? たまたまあの谷で、この玉飾りを拾っただけではありますまいか。(兵に向かい、咎めて)かようなめわらわにどれほどの力で打ちかかったのだ! もう、こやつは口は利けまい。聞かねばならぬことがあったというに……」

 

兵1「も、申し訳ございませぬ」

 

壬生「速見、落ち着け。主上にさえ櫃の中のものがわからぬのなら、何を連れ帰っても咎とがめられる謂いわれはない。このわらわの骸むくろを持ち帰れば我々は君命くんめいを全うしたと言えよう」

 

速見「(咎めるように)壬生さま……」

 

たづ「(遠くから)あとり!」

 

 SE:たづが息を切らして駆けつける音 兵が倒れる音

 

兵1・2「(2~3秒、断末魔の声のアドリブ。絶叫ではなくリアルな感じで)」

 

 SE:苦しみもがく音、ごぼごぼと血でふさがった気管から空気が漏れる音

 

壬生「何奴なにやつだ!」

 

速見「(息を少し荒くして)こやつ……なんだ? なんなのだ? こやつのまわりだけ景色が歪んで見える……あ、ああ……どうしたのだ、この怖気おぞけは……」

 

たづ「あとりをかえせ」

 

兵3「なんだお前は! 下がれ!」

 

速見「待て、勝手なことをするな!」

 

 SE:刀で笠を切り飛ばした音

 

速見「勝手なことをするなと申したではないか!」

 

たづ「たづの笠……父上のくれた笠……」

 

壬生「……白い、異形……もしやこやつが?!」

 

 SE:風と、肉が切れる音

 

兵3「がはっ!!」

 

 SE:人が倒れる音

 

壬生「今こやつ、何をした?! 何も見えなかったぞ!」

 

たづ「あとりをかえせ」

 

壬生「(用心しながら)お前は……天孫てんそんと共に降くだりながら櫃に封じられていたという、白くまつろわぬものか(返事を待つ間をおいて、小声で)速見、このめわらわはお前の言ったとおり見当違いで、こやつが本物のようだ。(たづに呼びかけて)お前は、瓊瓊杵尊ににぎのみことという御名ぎょめいに覚えはないか」

 

たづ「(無言で睨み、唸るような呼吸)」

 

壬生「(返事を待つ間をおいて、小声で)瓊瓊杵尊とは天照大神あまてらすおおみかみご神勅しんちょくにより中つ国へ降くだり給うた天孫の御名ぎょめいである。まことに覚えぬか」

 

たづ「たづが知るは父上とあとりのみ」

 

速見「あとり、とはこのめわらわの名か」

 

たづ「……そうだ」

 

速見「父上とは?」

 

たづ「(無言で睨み、唸るような呼吸)」

 

壬生「(少しにらみ合ってから、少し声を和らげ)我らが主あるじ、天孫の末裔たる皇尊すめらぎのみことが長岡の京みやこへそなたをお召しである。おとなしゅう参らるればこのめわらわは今この場にお返し申す」

 

たづ「(少し考えて)わかった……」

 

速見「葛部かちべ、そのわらわをそこへ置け。そっとだぞ」

 

葛部「はっ」

 

 SE:駆け寄る音 

 

たづ「あとり! あとり! 息を止めるな! うごけ!」

 

葛部「(たづにビビりながら、申し訳なさそうに)もう、こと切れておる」

 

たづ「(しばらく静かに泣いたあとぽつりと)たづは、かなしい」

 

速見「……すまぬ。無辜むこのわらわに惨むごいことをした、本当にすまぬ」

 

たづ「(間。ここから徐々につたなさを落とし、次の場の転換まで少しずつ本来の口調へ戻っていく)お前たちの主あるじ、そのすめらナントカは、あとりをよみがえらせることができるのか」

 

壬生「(できないことを承知で言いくるめにかかって)……我々にはわからぬが、主上は天照大神の由緒正しきご子孫であられるゆえ、何らかの御業みわざはあるやもしれぬ」

 

速見「(被せて)壬生さま……もうよしましょう。死者をよみがえらせることは誰にもできぬ。主上と言えど、生死の理ことわりは覆せぬのだ」

 

たづ「こんなあとり、返されたとて……たづは、たづは、なんと父上に申せばよいのか……父上は悲しむ。とても悲しむ(間。悲しみからじわじわと切り替わってきた怒りを押し殺して)あとりが死んだのは、もとはその主上おかみとやらのせいなのか」

 

速見「そうだ。我々が望んで民を傷つけることは決してない」

 

たづ「すめらナントカのところへ行く前に、一つ頼みがある」

 

速見「なんだ」

 

たづ「あとりが着けておるその簪の玉を、今ここで一粒残さず壊せ。さすれば、縛いましめなどなくとも、恭順きょうじゅんに京みやこへ参ろう」

 

壬生「それはできぬ……」

 

いずく「(この台詞はSE扱い。遠くから呼んで)おーい、あとりー! たづー! おーい、どこだー?!(30秒間続ける。アドリブ可)」

 

かの「(この台詞はSE扱い。遠くから呼んで)あとりちゃーん! たづー! 帰るわよー!(30秒間続ける。アドリブ可)」

 

たづ「(呼び声の中)急げ、父上に見せてはならぬ。(脅すようにひゅんと風の音をさせてから)さあ、今すぐ、その玉を壊せ」

                                                 

 SE:いずくとかの呼び声がゆるくフェイドアウトするのに被せ、ガラスの玉が砕け散る音

 場面転換、宮中、内裏

 BGM:先ほどの宮中シーンの曲を会話の流れに合わせフェイドアウト

 

しののめ「造宮使ぞうぐうしの藤原種継ふじわらのたねつぐさまが亡くなってのち、お后さま方、みこさまがたがみんな、里内裏さとだいりへお移りになって、もの寂しゅうございますね」

 

帝「しばしのことだ。陰陽師がどうしてもと言い張ってな。郊祀が恙無つつがなく終われば皆またこの内裏へ戻ってくる。それにあやつらがおらぬからこそ、朕はしののめと二人、ゆるりと過ごせるのだぞ」

 

しののめ「わたくしが独り占めできるのでございますね」

 

帝「そなたはまったく愛ういのう。それにしても今夜は寒うてならぬ、疾とく温ぬくもろうではないか」

 

 SE:甲冑の音

 

速見「(部屋の外から)恐れながら、速見友名はやみのともな推参仕つかまつります」

 

帝「このような夜更けに、無礼であろう。下がっておれ」

 

速見「どうか、どうか、わたくしの申し上げることをお聞き賜りますよう!」

 

帝「(不機嫌なため息とともに)しののめ、下がっておれ。速見、手短に申せ」

 

速見「その前に、この静けさにお気がつかれませぬか。わたくしが誰にも押しとどめられずここまで参りたるを異いなことと思おぼし召されぬのですか」

 

帝「朕はそなたに問うておるのだ。朕に問いを返すでない」

 

速見「……申し訳ござりませぬ。先に※承うけたまわりし、丹塗りの櫃の中のものを連れ、はせ参じましてございます」

 ※現代語とアクセントが違うので注意。「さき」と現代アクセントでやや高く読み、低く「に」と続く

 

帝「明日でもよいではないか。まあよい、どれ、見せてみよ」

 

速見「間もなくここへ参りまする」

 

帝「参る?! ……生きておるのか?!」

 

SE:近づく風の音

 

速見「は。ご覧ろうじるのが何より早いかと存じます」

 

 SEやBGMで不気味さを表現

 

帝「(息をのんで驚きを表現)!!! (認識力が戻るまでの間を置き、独白)なんだこやつは……宙に……宙に浮いておる!」

 

たづ「ほう、これがすめらナントカというやつか。ふーん……お前が、あとりを殺させたのだな」

 

帝「あ、あとり? あの胸朱あかき小鳥のことか」

 

速見「(被せて)いえ、このものを捕えし折、誤って命を奪いしわらわの名にございます」

 

帝「朕はあとりなど知らぬぞ。ただ、そなたを連れて参れと命じただけだ」

 

たづ「この私を見世物にして、人心をなだめようと? つまらぬ」

 

帝「速見、こやつに話したのか」

 

速見「こやつが櫃に眠りたる間に起こりし事々を、道々問われしままに答えておりましたら、こやつが見抜いたのでございます」

 

たづ「いかに愚かでもわかる。浅はかなことよ」

 

帝「化物めが……」

 

たづ「のう、すめらナントカ……名は、やまべと言うのであったな、ににぎのやしゃごのやしゃごのやしゃごの……ああ面倒だ、とにかくににぎの血に連なる者よ、土産をやろう」

 

 SE:ごとっと重いものを投げ出す音

 

帝「……壬生!」

 

たづ「あとりはやさしかった。多くのことを教えてくれた。なのに、あの忌々しい簪を挿していたばかりに死んだ……やまべ、この男の首を見ても、お前にとっては、虫けらの首がもげた程度のことなのだろう? 私はこれほど辛いのにこれでは到底償うに足らぬ。ほら、これもやろう。受け取れ」

 

 SE:話しながら、もう一つ投げてよこすが、受け取らず床に転がる音


 

帝「……し、しののめ……」

 

たづ「やはり足らぬわ」

 

 SE:風の音、次々と柱が切れ、軒が崩れる音

 

帝「……あ」

 

 SE:たづが帝の真ん前に近づく音(神鈴の音でも何でもいい

 

たづ「(帝の頭を両手で掴んで、顔の真ん前で)私は、ににぎが天より降くだるにあたり、先に降くだりし天の民を滅めっするために遣わされた。いわば神殺しの道具である。(楽しそうに)天孫てんそんより代を重ね、人となり果てたお前など、虫のように潰せる。実にたやすい」


 

帝「(力を入れられて、苦悶の様相で)ぐっ……」

 

速見「やめろ! やめぬか!」

 

たづ「(静かに笑って)やめぬ。つい先ほど、私が柱を切って見せたな? 年経としふる太い檜ひのきの柱を何本も。(再度静かに笑って)お前の頭はあの柱よりも随分と柔らかい。壬生みぶよりも肉がついて、よう食うておるようだ。さて、どうしてやろうか。ほーら、体が浮いたぞ」

 

帝「(苦しみながら)……天居あまい……離せ……離してくれ」

 

たづ「その名、伝わっておったか。名を知っている程度で私を御せるとでも思うな。もはや私は天居などという名ではない。私には敬い慕う者と、新しい名がある」

                                                 

 SE:遠くからどたどたと駆けつける複数人の足音

 

速見「(待てなくなった様子で)葛部! 葛部! 早う! 早う参れ!!」

 

葛部「(息せき切って)お待たせ申しました、仰せの通り、連れて参りました!」

 

いずく「たづ!」

 

たづ「(心底驚いて)……父上?」

 

葛部「(息せき切って)速見さま! 遅くなり申し訳ございませぬ」

 

速見「(安堵で半泣きで)間に合おうた……杞憂ではなかった……」

 

いずく「たづ、やめろ!」

 

 SE:たづが宙に浮かせた帝の体をどさっと落とす音

 

帝「ぐふっ……(気絶するときの声。アドリブでOK)」

 

たづ「父上、なぜここに……」

 

いずく「葛部かちべさまにすべて聞かされて、連れて来てもらった」

 

たづ「(たじろぐ呼吸)……」

 

いずく「(なんといおうか迷っている間をおいてから)俺がたづを拾ったとき、あとりはお前を一目見て『鬼』だと言って怖がった。あとりは……正しかったんだな」

 

たづ「父上、それは……」

 

いずく「(被せて)お宮の大きな門からここまで、新しい骸むくろが散らばっているのを見た。年寄りも、若いのも、男も女もみんな……笑ったり、怒ったり、何か考えてたり……そのままの顔と姿で死んでいた……きっと、何が起こったかわかる間もなく一瞬で……(耐えられなくなって震え声で)なぜこんなことをした!」

 

たづ「こいつが、あとりを殺したから。苦しめたかった。たづは……あとりが死んで悲しかった。だから償わせたかった!」

 

いずく「あれだけたくさん死なせて、この人は苦しんだか? お前の悲しみを償つぐなえたか?」

 

たづ「まったく足りぬ……誰もかれも、こいつにとっては虫けらでしかない」

 

いずく「俺もあとりも、つながりのない者から見れば虫けらだ。あの死んだ人たちと微塵みじんも変わらん」

 

たづ「父上は違う!」

 

いずく「……葛部さまからすべて聞いたとき、俺がどんな思いをしたかわかるか? 血の跡を残して、あとりとお前が消えて……何日も何日も探し回って」

 

たづ「(被せて)どうか、どうかお許しを……たづは父上を悲しませたくなくて」

 

いずく「……あとりは、今、どこにいるんだ」

 

たづ「(唇をかんで)ぐっ……」

 

速見「いずく……と申したな。我が名は速見友名はやみのともな。あとりのことはすまぬ。本当にすまぬ。あとりの骸むくろは今、内裏の奥、彩雲さいうんの屏風びょうぶの前にある。たづが後生大事ごしょうだいじにここまで抱えてきた。宮中から金銀と錦にしきを集めて美しゅう包んでおる」

 

たづ「(ぽつりと)たづは、あとりを隠したかった。父上が嘆くのを見とうなかった」

 

いずく「……あとりは俺が連れて帰る」

 

たづ「父上、郷へ帰ってはならぬ」

 

いずく「(被せて)たづは、もう、俺の知っているたづじゃない……あとりと一緒に死んでしまったんだ」

 

たづ「父上、すべてたづが父上を思うてのことで……(ここから、水を得たオタク的な熱意と速さで)たづは、何でもできる。父上が望めば、どんなこともできる。たづは郷も国もみんな父上のものにできる。たづの命いのちを分け、父上を老いず死なずの身にすることもできる。たづは何をすればよい? 何をすれば父上はたづを許す?」

 

いずく「(怒りを含んで、静かに)あとりを今すぐ、生かして返せ」

 

たづ「それは……」

 

いずく「それができないなら、俺の望みは……たづ、もう何もしないでくれ。人を殺めるのも、人の大切なものを壊すのも」

 

たづ「父上……」

 

いずく「父上と呼ぶな。俺はお前の父ちゃんじゃない。(速見に向き直って、暗い声で)……速見さま、葛部さま、あとりを連れて、俺を帰らせてください」

 

速見「……たづはどうする? ここに置いていくわけにはいかぬ。たづはお前の言うことならば聞くというから葛部に連れてこさせたのだぞ」

 

いずく「たづは神さまか、それに近いものなのでしょう? それを俺が抑え込むのは無理です」

 

速見「(被せて)それでも、伏して頼む。こやつは、お前以外の誰の手にも負えぬ」

 

たづ「(被せて)父上、……父上が父ではないこと、なんとはなしに感じるようになってはおった。ただ、私の近くにいて、温かく、やさしく、何も求めぬ、そのようなものを親と呼ぶことしか、あのときは思い至らなかった。(間をおいて、哀願するように)いずく……私をそばにいさせてくれ。いずくが嫌がることはしない。ただ、そばにおいてくれればいい。頼む、いずく」

 

いずく「……いやだ。俺に触さわるな」

 

速見「いずく!」

 

たづ「(長めの間)……人の温かさを知りたる私は、もう昔には戻れぬ……(空を仰いで再度長めの間をおき、やさしく)いずく、また見まみえる時が来る。いずくが私に会いとうてたまらぬ時が来る。……私に何もするなと言うたな。時が来るまでは御身おんみの望むとおりにしよう。ではしばし、さらばである」

 

 SE:たづのセリフに重ねてしばらく激しい突風の音

 

葛部「(突風に吹き煽られて)うおおっ!」

 

いずく「(突風に吹き煽られて)うわ……!」

 

 SE:突風が徐々にやみ、静かになる

 

速見「……たづは行ってしもうたな。主上はご無事か」

 

 SE:倒れている帝にひざまずく音

 

葛部「はっ、傷ひとつなく、すぐにお目覚めになると思われます」

 

速見「では、今のうちに行くぞ」

 

葛部「衛士えじを呼びに……?」

 

速見「(被せて)衛士どころか、五つの衛府えふの陣じんから曹司ぞうし、大炊寮おおいのつかさにいたるまで一閃で無人となっておるわ。あの神もどきが生かすと決めたもの以外、この長岡の宮におるものは皆死んだ」

 

葛部「主上のおそばに誰もいなくてもよろしいのでしょうか」

 

速見「よい。(力を入れて)首をこう傾けておけば……御心地おんここちつかれるまでに時を稼げる。葛部は、いずくをあとりの骸と共に郷に送り返せ。そのあとは戻らず、家族とどこかで静かに暮らすがいい」

 

葛部「速見さまは?」

 

速見「私は、衛門佐えもんのすけさまの邸やかたへにお報しらせし、その後のちに京みやこを出る。……では葛部、いずく、疾とくここを離れよう。息災そくさいでな」

 

葛部「はっ……どうか速見さまも!」

 

 SE:複数の馬の駆け去る音

                            

 眺めの少し間をおいて場面転換

 場:いずくのいる山里

 SE:儀式のために集まった郷の者のざわめき

 

郷人1「ああ、堤が切れさえしなきゃなあ。今年は米がよう実なりそうだったのに」

 

郷人3「あいつも気の毒だが仕方がない、早う堤を直すためだ」

 

郷人2「人と思うから気の毒になったりするのよ」

 

郷人4「そうそう、あいつらはもともと人柱のための畜生だ。哀れなことは何もない。鶏と同じだ」

 

郷人1「だからあいつら、鳥の名前なのか」

 

郷人3「その鳥の名も、こいつで最後なんだろう? 次はどうするんだ」

 

郷人4「そのうちまたよそ者捕まえて、足曲がりだのめくらだのと一緒にあの小屋に置いときゃいいだけだ。間に合わんかったら、とりあえずはかのを埋めときゃいい」

 

郷人2「あ、来た」

 

 SE:ひときわ高まるざわめき、道を何か引きずるように数名で歩く音

 

郷人4「ほら、どいたどいた。鳥が通るぞ」

 

郷人3「おお、……やつれてるな」

 

郷人2「自分が埋められるのがわかってりゃ、誰でも何ものどに通らんでしょ」

 

郷人1「あいつ、俺たちが足曲がりの骸を包んどった錦を剥ぎ取ってからずっとこうらしい」

 

郷人4「錦一匹いっぴきぶんも独り占めして骸を包んで埋めようとしとったのを皆で止めたんだったな。身を弁えろ。鳥のくせに」

 

郷人3「お、堤の礎に括られた。あの白いのは前の人柱の骨か」

 

かの「(泣いて)いずく……ごめんね……ごめん……ごめんなさい」

 

郷人2「(鋭く)かの、めそめそすんじゃないよ、耳障りだわ」

※耳障りだわ、は女性語の語尾ではなくおっさん風に

 

 SE:土をかけて埋め始める音

 

郷人3「あいつ空を見あげて何か口元を動かしとる」

 

郷人2「どうせ命乞いでしょ? 耳を貸すだけバカバカしい」

 

郷人1「ああ、今日はやけに風が強いな……急に日が翳ってきた」

 

郷人4「(間)おい、何か……何か降って来るぞ! 上だ! 上を見ろ!」

 

 SE:風の音 一瞬無音ののちBGM

 

※以下、ガヤ。台詞は各自アドリブに変更可

 

郷人1「(ガヤ)なんだ!? なんだあれは?!」

 

郷人3「(ガヤ)白くて大きな……鶴? いや、人の形をしとる!」

 

郷人4「(ガヤ)礎に降りた……いや降りてない! 浮いとる!」

 

郷人2「(ガヤ)まぶしい!……目が潰れる! 痛い!」

 

 SE:なんか適当に

 

たづ「いずく、呼んだな。私の名を」

 

いずく「(ここ以降、意識を半分失いつつ、まばらに呻く)呼んだ……呼んでしまった……」

 

たづ「(うきうきと)うれしい。私はとてもうれしい。(間。一変して怒りを含み)……だが、私を呼ばせるまでに御身を傷つけた者どもは許さぬ」

 

いずく「頼む……かのは……」

 

たづ「私はあの女が嫌いだ。あの女さえいなければ、どれほど……」

 

いずく「(被せて)たづ、……かのだけは……」

 

たづ「私が望むのは、いずくのそばにいること。さすれば、私はいずくを父と呼びし日々のように、大人しゅう、かわゆらしゅうする。だから、幾久いくひさしゅうそばにいて私をかわいがれ。ひとりにするな」

 

いずく「ああ……約束する」

 

たづ「(うきうきと)ならば、いずくが私に望んだことは、全て叶える。御身が生かしたいと望んだ者以外、一人残さずこの郷を滅しよう。見たくなければ目を瞑れ、一瞬で終わる」

 

 SE・BGMで体裁を整える

 

――終劇

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